世界で初めてむち打ち症の原因を解明する




むち打ち症ー我が闘争の記録

院長は、これまで原因不明であったむち打ち症の原因を、世界で始めてレントゲンの画像上に発見し、また治療法を確立しました。この業績は、国内では日本整形外科学会に2度発表しました。海外では整形外科の世界最大の学会であるSociete Internationale de Chirurgie Orthopedique et de Traumatologie(SICOT87:]Z,WORLD  CONGRESS)に応募し、世界中から超一流の業績が集まった中から厳しい審査を経て採用され、1987年に西ドイツのミュンヘンにおいて発表しました。その後、この研究は世界の注目を集め、整形外科の学術誌では世界最高位である、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・南アフリカの6カ国の国際的な学会誌であるThe Journal of Bone and Joint Surgery(JBJS誌)に掲載されました。むちうち症の原因および治療法が、学会誌(JBJS誌)に掲載されたことで、むち打ち症は世界的に疾患として認識されました。当院ではむち打ち症の研究をさらに進めて、良い治療成績を得ています。

むち打ち症の特徴

むち打ち症と他の外傷との大きな違いは、むち打ち症では多くの場合、自律神経症状を伴う点です。一般的な外傷では、通常自律神経症状は伴うことはありません。むち打ち症は、追突のような単純な受傷機転によって発症しますが、説明し難い症状が出現するのは自律神経が関与するためです。

むち打ち症の原因

頚椎の椎間板ヘルニアが原因です。椎間板ヘルニアの真後ろに位置する脊髄神経を圧迫するのではなく、頚椎椎間板ヘルニアが後外側に突出して、脊髄神経から出て首や腕に行く神経根と自律神経を刺激、あるいは圧迫することで発症します。
 
むち打ち症の原因解明を世界で始めて成功したのが院長であり、その方法は、頚椎の硬膜内に造影剤を入れて撮影する、すなわち脊髄造影の撮影方法を工夫して、むち打ち症の原因が、頸椎椎間板ヘルニアの外側型によること発見しました。むち打ち症の原因になる頚椎椎間板ヘルニアは、第3頸椎以下のどの椎間においても発生することもわかりました。(JBJS誌71-B:283,1989)。

むち打ち症の症状

むち打ち症は、通常次の4型に分類されます。
頚椎捻挫型: 首の周囲の痛みや違和感です。
神経根型: 頚や背中から、腕や手の痛みや痺れ、握力低下を起こします。
脊髄症状型: 頚部痛や、手だけではなく、体幹や足にも痺れや知覚が鈍くなります。
バレー・リュウ症候群型: 頭痛やめまい、耳鳴り、眼の症状のように、頭の症状を起こします。

むち打ち症の発症時期

受傷後すぐに発症するだけではなく、1-2日してから症状が増悪する場合もあります。とくに、受傷直後に頭がボーとしている場合は、受傷直後は痛みをあまり訴えませんが、頭がはっきりしてくると痛みを強く訴える場合があります。一般の外傷は、受傷直後から痛みが出現しますが、むち打ち症の場合は、自律神経が症状発現に関係しますから、遅れて症状が現れることがあります。受傷直後には症状が出なくても、1週間以内は症状が出ることがありますからこの間は安静が必要です。また、受傷後1週間過ぎてから症状が現れることはほとんどありません。

むち打ち症の診断が難しい理由

診断のために首のレントゲン写真を取りますが、むち打ち症の場合、レントゲン写真には異常は認めません。また、MRIを撮っても異常所見は認めません。この理由は、頚椎椎間板ヘルニアの突出する量が少ないために、画像に捉えられないのです。レントゲン写真やMRI検査に異常所見が現れないことが、むち打ち症の診断と治療を難しくしています。

適切な治療

むち打ち症が疑われたら、まず頸部の安静が重要です。むち打ち症の場合、医師の診断と治療は、患者様の身体の診察と、患者様の訴えを基にして行います。レントゲン写真やMRI検査に通常異常所見を認めませんから、治りが悪い場合は、むち打ち症についての十分な医学的知識のある医師に診てもらうことが必要です。

            
むち打ち症発症のメカニズム  

むち打ち症の発症の原因を考えるとき、日本刀による斬首はなぜ可能なのかを考えるとそのメカニズムを理解するうえで役に立ちます。忠臣蔵で有名な泉岳寺には、赤穂浪士たちの墓が整然と並んでいます。1日に40人以上が切腹により斬首されましたが、使われた日本刀の刃は薄く首の骨にあたって一見斬首できないように思われます。斬首できる理由は首のレントゲン写真の側面像を見ると解りますが、首を前に曲げると、頚椎の後方にある上下の棘突起(骨)の間(靭帯部分)が広くなります。そのため頚椎の骨と骨とを繋いでいる軟骨である椎間板(椎間板はメスでも切れるような比較的柔らかい物質です)に水平に線を引くと、頚髄神経の前方は椎間板を、後方は上下の棘突起(骨)の間にある棘間靭帯を通ります。すなわちこの一線上において、頚椎の骨性部分はわずかに椎間関節の上関節突起の先端だけですから、解剖学的構造によって、刃の薄い日本刀でも容易にほとんど抵抗なく斬首できることがわかります。

 車に乗っていて追突された時には、後方から座席ごと背中が水平方向に前方に押し出される衝撃を受けます。体の後方からの衝撃では、唯一上下の骨の間を繋いでいる椎間関節も制動には役にたちません。それは椎間関節は上関節突起と下関節突起で構成されていますが、上関節突起は下位の頚椎の一部であり、上位頚椎の下関節突起よりも前方に位置しています。このため、追突によって体が前方に移動し頭が残るような衝撃を受けると、骨性要素である椎間関節は制動には全く関与しませんので、制動に関係する最も硬い構造物は椎間板になります。しかし、椎間板はメスで容易に切ることができるほど柔らかい軟骨ですから、「ずれる力」がかかると、簡単に断裂します。これが低速度の追突でも、椎間板損傷を引き起こし、むち打ち症を発症する理由です。

 車を運転している時、前方や側方、後方を確認するため、頭はヘッドレストに接しておらず首だけで支持されています。運転席に座っている時の姿勢は、ブレーキ、アクセル等のペダルを操作するために背もたれは軽度後方に傾いており、首は軽く前方に曲げています。この首の位置では頚椎の椎間板から棘突起の間が一直線になります。すなわち切腹し斬首されるときの首の位置になり、首の骨で防御するものはありません。首がこの位置で追突されれば、車に固定されている座席とともに背中も前方に移動しますが、頭部は慣性でその場に残るため首に剪断力(ずれる力)がかかります。文献によれば、追突された時頭部に対して肩が15cm前方に移動しても、頭部は追突以前の位置に止まるとされています。首が剪断力を受けた時この力を防止する骨性の構造物はありませんので、可動性のない軟骨である椎間板に最も剪断力がかかり断裂します。追突時に身構えればむち打ち症の発生をある程度防止できますが、それは筋肉を収縮させて背骨全体を棒のように固定し剪断力を防ぐためと考えられます。

 これまではむち打ち症の発症の原因は、首の生理的な可動域を超えて後屈させられた時に起こると考えられてきました。しかし、最近の研究では首の生理的な可動域の範囲内でも発症することが解りました。すなわち、低速度で追突されてもむち打ち症を発症するのです。

 すなわち、むちうち症は、首への外傷によって、頚椎の椎間板にずれが生じて椎間板損傷を起こして発症することになります。

むちうち症になったとき読む文献

北河隆之:「頚部外傷性症候群」再論:判例タイムス726,p43, 1990.
要約:日本整形外科学会学術総会でのパネルディスカッションの内容を演者の一人である筆者が弁護士としてまとめたもの。患者の権利を守ろうとする筆者の熱意が表れており、この中には院長の発言内容も引用されています。

T.Tamura:Cranial Symptoms After Cervical Injury、Atiology and Treatment of the Barre-Lieou Syndrome. The Journal of Bone and Joint Surgery (British Volume) 71-B:283-287,1989.

田村壽將:頸椎部アミパ−ク Myelography(斜位像)からみたBarre-Lieou症候群の病態について:整形外科37:241-249,1986
要約:治療期間が長期化する頭痛やめまい、耳鳴り等の症状の原因を明らかにした論文です。これらの症状は心因性によって起こるのではないことを示しました。

Editorials: Whiplash injuries : JBJS誌:79-B: 517,1997.
要約:現在のむち打ち損傷に対する考え方を全般的に示しており、むちうち症の患者さんの置かれている立場を理解することができます


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