椎間板ヘルニアの治療法

「椎間板ヘルニアとは」

人間は1本の支柱(脊柱)の頂きに、重い頭を載せて立つ構造をしています。1本の柱というと1本の棒でできている案山子を思い浮かべますが、案山子の柱には関節がないので柱を前後左右に動かすことはできません。人間の脊柱は、臼型の骨が、頚部で7個、胸部で12個、腰部で5個、重なって1本の柱を形成しています。この臼型の骨と骨の間には椎間板という軟骨があり、この椎間板には骨と骨の間のクッションの役割と、骨と骨の間に隙間を作ることで、脊柱を前後左右に曲げたり、また回旋させる役割を持っています。頚と腰は、脊柱の動きやすい場所なので、骨と骨の間を繋いでいる椎間板が障害を起こしやすい場所となります。
 椎間板障害のなかで、最も一般的なのが椎間板ヘルニアです。首に起こると、「頚椎椎間板ヘルニア」、腰に起こると、「腰椎椎間板ヘルニア」、と言います。椎間板ヘルニアは、首や腰の骨の間を繋いでいるクッションの役割をしている椎間板が、後方に突出ないし脱出して、脊髄神経を圧迫したり、刺激することによって、首や上肢、あるいは腰や下肢に疼痛やしびれを引き起こした状態をいいます。また自律神経症状を起こすこともあります。脊髄神経が椎間板ヘルニアによって圧迫ないし刺激されると、椎間板と脊髄神経の間で摩擦が起こり炎症反応を生じて椎間板と脊髄神経が癒着します。

「治療法について」

手術療法の欠点

(1)再発

以前は椎間板ヘルニアに対して積極的に手術を行った時期がありました。確かに手術後短期間の成績は良いことがわかっています。しかし術後10年程度の長期成績では約半数に再発してくることがわかってきました。
 最初の椎間板ヘルニアの手術は、脊髄神経と周囲の組織との間の癒着が少ないので、脊髄神経を周囲の組織から容易に判別できます。そのため、脊髄神経を損傷することなく椎間板ヘルニアの切除を行えます。初回の椎間板ヘルニアの手術成績は比較的良い成績が得られています。
 しかし、手術後に椎間板ヘルニアが再発すると、再手術が必要になります。再手術になると、脊髄神経は、1回目の手術後に形成された瘢痕組織の中に埋没していますから、脊髄神経の位置を確認することが困難となり、例え脊髄神経の位置を確認できても瘢痕は厚く硬くなっていますので、脊髄神経と周囲の組織との間を分離することは極めて困難です。
 手術中に脊髄神経を損傷すると神経麻痺を起こしますから、絶対に脊髄神経を損傷しないようにしなければなりませんが、再手術では極めて難しい技術を要求されます。このような理由によって、2回目の手術は初回の手術とは異なって極めて難しい、リスクの高い手術になります。



(2)瘢痕

皮膚を切開すれば必ず瘢痕(手術痕)ができます。瘢痕をよく見ると正常な状態とは違ってひきつれています。正常な皮膚は自由に動きますが瘢痕は硬く全くといっていいほど動きません。手術をすると切ったところは全て瘢痕で埋まります。
 手術によって椎間板を切除するためには、脊髄神経を損傷しないように、脊髄神経を周囲から剥がす必要があります。すなわち脊髄神経の周囲は、人為的に切離ないし剥離するので、手術後には脊髄神経は瘢痕の中に埋没します。
 このため、2回目の手術時には前回切開した所は全て瘢痕で埋められますので、脊髄神経を確認して、周囲の組織から剥がすことが極めて困難になります。手術してみると神経の位置すらわからないことも往々にしてあります。その結果2回目の手術成績は極めて悪くなるだけではなく、誤って脊髄神経を損傷する危険も伴います。手術しても改善しないために数回にわたって手術を行うこともあります。
 このような理由から、「椎間板ヘルニアの手術は、極力避けるべきである」すなわち、「手術をしないで治療すべきである(保存療法)」、との結論が世界的合意となっています。

保存療法の利点

(1)保存療法の理論

椎間板ヘルニアの手術後に起こる絶対に避けられない合併症(癒着)を避けるために、手術をしないで治す方法(保存療法)が見なおされてきました。椎間板ヘルニアの手術を分析すると、脊髄神経を椎間板から剥がすことと、突出した椎間板ヘルニアを切除すること、から構成されています。これらの手技を手術をしないで行えれば、手術は必要なくなります。
 保存療法の理論的な根拠は、近年のMRIによる腰部椎間板ヘルニアの追跡調査の結果、突出した椎間板ヘルニアは約3ヶ月で自然に消失ないしは減少することが解ってきました。これは椎間板には水分が多量に含まれており、ヘルニアとして椎間板が損傷すると椎間板に含まれている水分量が減少し体積が縮小するためです。すなわち、椎間板ヘルニアは、手術で切除しなくても徐々に縮小することから、手術する意味はありません。残る問題は、椎間板と脊髄神経との間の癒着を剥がすことです。このために後述しますが、当院では硬膜外ブロックを行い、脊髄神経と椎間板ヘルニアの間を剥離しています。
 椎間板ヘルニアの手術で行う手技は、実際は手術しなくても行えることが解りました。これが、当院で行っている椎間板ヘルニアの保存療法の理論です。既に、当院を開業以来15年以上、保存療法で椎間板ヘルニアの治療を行っていますが、極めて良い結果を得ています。


(2)硬膜外ブロック

椎間板ヘルニアと脊髄神経との間の癒着を剥がす方法として当院で採用しているのが、硬膜外ブロックです。硬膜外ブロックで、脊髄神経と椎間板の間に濃度の薄い麻酔薬を入れて徐々に剥がしていきますから、脊髄神経を損傷することはありません。また、ブロックでは、手術後に見られるような瘢痕を起こすことはありません。硬膜外ブロックを安全に行うために、使用する薬剤の種類や濃度、用量を検討し、また硬膜外ブロックの手技自体も改善して施行しています。これまで数多くの経験がありますが、全例安全に治療が行われています。

(3)安全性

保存療法は手術療法より、症状が改善するまでに時間がかかりますが、後遺症を残すことなく安全に治すことができます。また手術のように手術後の瘢痕を起こすこともありません。当院では、90歳を超えるような高齢者にも積極的にこの方法で治療していますし、また良好な結果を得ています。

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